コンビニエンスストアにおける転倒事故に ついて

光沢性(潤滑性)

 コンビニエンスストアのフロアは来店客に対し「明るさ」と「輝かしさ」を強調している。具体的には,約1,000ルクス26)の「照明」と光を反射する「セラミックタイル床」である。この「明るさ」と「輝かし
さ」が店舗のイメージを高め,来店客を誘導する仕掛けの役割を果たしている。また,照明を明るくすることは防犯上の効果も期待される。反面,フロアの床の材質である「光沢」であるが,表面に「ザラメ」の素
材を入れることで一定滑りにくくなるが,その分,光沢性が薄れる。沢を強くすると潤滑性を伴う可能性が高まることから,来店客が滑りやすくなるリスクが高まる。
 次に,以上想定されるコンビニエンスストアの賠償リスクの増加のうち,事故態様として高齢化に伴う高齢の来店客の増加による発生リスクを念頭にしてコンビニエンスストアにおける転倒事故の原因,法律上の
責任および判例の順で考察する。

4.転倒事故と判例

4.1 転倒と法律上の責任

⑴ 転倒の概念

 本稿においては転倒を「同一平面上でバランスを失い倒れて受傷したもの(押され,突き飛ばされ,スリップ,つまづき等)」と定義し,「転落」,「墜落」とは区別する27)。転倒の事故につながる動作には「すべる」,「つまずく」,「踏みはずす」,「ひっかかる」,「押される」があるが,特に事例として多い「すべる」に注目した。すべる事故のきっかけには「濡れ」,「凍結」,「汚れ,ごみ」,「摩耗」,「すべる素材」,「すべりやすい塗布材」が、店舗特有と思われるスリップによる同一平面上での転倒に着目し,論ずる。

転倒の要因
 転倒は「環境要因」,「身体要因」,「身体活動」の3つの要因が重畳して帰結する場合が多いと指摘する。逆に言えば,これらの要因のどれかひとつでも排除出来れば転倒を予防できる可能性が上昇する。
(図表3)。コンビニエンスストアにおける転倒事故に置き換えてみると次のようになる。

転倒の3要因
 「高齢者がコンビニエンスストアにおいて買い物中,水で濡れて滑りやすい通路を床の濡れに気づかず転んだ」場合を考えてみると,「環境要因」としては水で濡れて滑りやすくなっている通路が相当する。「身体要因」としては,本人の素因,身体機能の低下(高齢のための歩行困難),床の状態に気づくことが遅れた,酩酊していた,履いていた靴の種類(革靴,ゴム底靴,サンダル等)と使用の程度や杖使用の有無等が相当する。「身体活動」とは歩くことであり,スマートフォンや携帯電話の画面を見るのに夢中というような行動が修飾される。これらの3要因がそろったときに転倒の危険性が上昇する。したがって転倒予防のためにはこれらの3要因を理解し,対策を立てることが重要となる。

⑶ 法律上の責任

 コンビニエンスストアにおける事故に対する法律上の責任として,店舗には工作物責任(民法717条)と安全配慮義務違反による不法行為責任(民法709条)が挙げられる)。なお,安全配慮義務であるが,もともと使用者の雇用契約に対する付随する義務のひとつとして観念されていたが,その適用範囲は広がり,労災事故,学校事故,その他の法律関係にも広く使用されるに至っている)。
 まず工作物責任であるが,民法717条第1項によれば「土地の工作物の設置又保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは,その工作物の占有者は,被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。」と定めている。「設置又保存に瑕疵があること」とは「工作物が本来(または通常)備えるべき安全性を欠いている状態」と解されており),工作物の設置または保存に瑕疵ある場合には,所有者は損害防止に必要な注意を払ったか否かにかかわらず賠償責任を負うので,その性質は一般に無過失責) 他に,店舗建物所有者がコンビニエンスストアに建物を貸している場合,施設の管理などの義務に反したことに起因し,建物所有者との間にある者(コンビニエンスストア)に損害が発生した場合,建物所有者は契約上の信義則に基づき認められる安全配慮義務を尽くさなかったことによる債務不履行責任(民法415条)と損害賠償責任(民法709条)を負うことがある。
 コンビニエンスストアにおける転倒事故についての一考察 任だと解されている)。「通常有すべき安全性」の判断基準は,「構造,用途,場所的環境及び利用状況等諸般の事情を考慮したうえ,通常予想され
る危険の発生を防止するに足りると認められる程度のものを必要とし,かつ,これをもって足りる」とされる。
 次に安全配慮義務違反による不法行為責任であるが,民法709条によれば「故意又は過失により権利または故意によりこれにより生じたる損害について賠償する責を負う」と定めている。フランチャイザーは来店客に対する安全配慮義務が問われる他,フランチャイジーにはフランチャイザーに対する指導をしなかったことに対する安全指導義務違反が問われる可能性がある。従って,フランチャイジーとフランチャイザー双方の役割と責任分担を含めて来店客に対する必要な対策を講じる必要がある。

4.2 転倒事故に関する判例

 次に,コンビニエンスストアにおける転倒事故(損害賠償事故)の判例を検討する。多くの店舗が24時間365日営業をしている現状を勘案すれば,転倒事故が一定数発生していると思われるが,過去の判例を見たところ,最高裁の判決はなく高裁レベルでの判例にとどまっており,十分な裁判例の集積があるとは言い難い。そこで,建物の構造・管理に起因する同一平面での転倒事故につきコンビニエンスストアの責任を定・否定した判決を例に転倒の原因と責任の認否について検討し,判例から転倒事故の特性を考察する。

⑴ 肯定例(大阪高判平成13年7月31日35)

① 事件の概要

 本件は,被告の経営するチェーン店の1つで買い物をしている最中に女性が,店舗の床を濡らしたままにしていることが転倒の原因であると主張し,不法行為を理由として慰謝料等を請求した事案である。なお,床清掃は,加盟店全店で統一的にフランチャイズ本部から支給されていたモップと水切り(リンガー)を用いて行われたが,水拭きがされたのみで乾拭きはされなかった。
②判旨
 被災者が床清掃の後にコンビニエンスストアで転倒した事故について,一審は施設側の責任を否定したが,控訴審は床の管理に義務違反を肯定した。控訴審判決は「C.S.R 値37)を基に,第一段階が,乾燥時・湿潤時いずれの場合にも優れた結果が得られた製品,第二段階が,乾燥時に優れた結果を示し,しかも湿潤時にもそれほど結果が低下しなかった製品,第三段階が,湿潤時と乾燥時でデータに大きく差のある製品,第四段階が,乾燥時にもよい結果の得られなかった製品とするものである」ところ,「本件のような店舗は,年齢,性別,職業等が異なる不特定多数の顧客に店側の用意した場所を提供し,その場所で顧客に商品を選択・購入させた利益を上げることを目的としているのであるから,不特定多数の者を呼び寄せて社会的接触に入った当事者間の信義則上の義務として,不特定多数の者の日常ありうべき服装,履物,行動等,例えば靴底が減っていたり,急いで足早に買い物をするなどは当然の前提として,その安全を図る義務があるというべきである。そして,本件では,本件店舗側が,顧客に提供する場所の床に,特に防滑性には優れておらず,事故日時は1996年10月31日㈭正午過ぎであり,当時の天気は晴れである。
 すべり抵抗の評価指標。OY-PULL 法(すべてり抵抗試験機による実歩行を想定した試験方法で,水平面に体重相当の765ニュートンをかけたすべり片を18度の角度で一般体重の歩行時にかかる力相当の毎分785ニュートンで引張ったときの静止摩擦係数を測定する方法)で計測したすべりはじめの最大引張所要力を積載荷重で除した値。合成ゴム底の場合0.7前後が歩行として快適性,安全性において最適とされる。紳士硬底靴の場合,乾燥時は0.75,湿潤時は0.43とされる。合成ゴム底に比べると革底の方が滑りやすく,乾燥
時と湿潤時の CSR 値の差が小さいほど防滑性に優れるものとされる。

 コンビニエンスストアにおける転倒事故についての時に比べると,湿潤時には C.S.R 値が大きく異なり,滑りやすさの増す床材を用いており,しかも,モップで水拭きをすることにより,床がより滑りやすい状態になることは明らかであるといえる。そうすると,本件店舗側は,顧客に対する信義則に基づく安全管理上の義務として,水拭きをした後に乾拭きをするなど,床が滑らないような状態を保つ義務を負っていた」がこれを怠ったとしてコンビニエンスストアの責任を肯定した。ただし,来店客が靴底が減って滑りやすい靴を履いていたこと,パンと牛乳を持って両手がふさがった状態であったことなどを考慮し,被災者の過失も5割とした。

③ 判決の考察

 本件は,コンビニエンスストアの店舗内で顧客が濡れた床に滑って転倒した事故につき,第一審判決を覆えしてコンビニチェーンのフランチャイザーに安全指導義務違反があるとして,5割の損害賠償が認められ
た事例である。
 まず,転倒に至った経緯を考察する。転倒は店舗スタッフが床清掃の後である。モップと水切り(リンガー)を用いて床清掃が行われたが,水掃きがされたのみで,乾拭きはされなかった。用いられたモップなど
は,店内に放置されていた。被災者は,普通に歩くくらいの速さで商品棚に沿って商品を眺めていた。ビニール袋に入ったパンを3つと牛乳1パックを取り,両手に持って歩いていたところ,左足を滑らせ,その場
でしりもちをついて転倒した。転倒した際に被災者が床に手をついたところ,濡れていることが判明したが,見ただけではわからず手で触れて初めてわかる程度の濡れ方であった。来店客は転倒した際,陳列棚の端で左腕の肘から上腕の肘から上腕にかけて一部筋組織に達する左上腕挫
滅創を受けたという事案である。
 本事案を前述の「転倒の3要因」から見てみると,「環境要因」である床の水濡れであるが,「転倒した際に原告が床に手をついたところ,濡れていることがわかったが判明したが,見るだけではわからず手で触
れて初めてわかる程度の濡れ方であった」とある。また,床素材は特に防滑性に優れている商品ではないが,逆に特に滑りやすい性質のものではない。メンテナンス方法については,メーカーは,日常の手入れとして掃除機やホウキ,水拭きモップでの水拭きをすることを指導するのみであり,特に滑りやすいからという理由による特別の要請はなされていない。次に「身体要因」であるが,水濡れに気づかなかったのは「ビニール袋に入ったパンを3つと牛乳パックを取り,それらを両手に持って歩いていた」ことにより視界が狭まっていたことが認められる。

 最後に「身体活動」であるが,「昼休み時間が十分にありそれほど急ぐ必要もなかったので,原告は,普通に歩くくらいの速さで商品棚に沿って商品を眺めていた」とあるが,上述のとおり視界が狭まった状態での歩行であったことが推察できる。これらが重畳して転倒に至っている。なお,本人の素因は認められない。
以上の転倒の原因を踏まえて本判決を次に検討してみる。本件は何らかの不測の状態によって床が濡れていたのではなく,現に客が出入りする時間帯に,店舗の従業員が床を濡れポップで拭いたことにより床が濡
れやすい状態になっていた点が一因ではあるが,店舗側はメーカー側から床拭きのメンテナンス方法として特に滑りやすいからという理由による特別の要請はなされていない。本件は何らかの不測の状態によって床
が濡れていたのではなく,現に客が出入りする時間帯に,店舗の従業員が床を濡れポップで拭いたことにより,床が濡れやすい状態になっていた点が一因である。また来店客の転倒に至る受傷機転を見てみると,靴
底が減って滑りやすい靴を履いていたことは当日の天気が晴れていたことからすれば突飛な行動とは思われないが,濡れていることが目視できるほどではなく,滑りやすいことに注意すべき義務があったとはいえな
いものの,パンと牛乳を持って両手がふさがった状態であったことがバランスを失い転倒に至ったことを考え併せれば,原告の不注意(自招事故性)がやや強く認められる。またフランチャイザーのフランチャイジ

 コンビニエンスストアにおける転倒事故についてのに対する安全確保義務の指導として,果たして水拭き後に乾拭きをすることまで指示する義務がフランチャイザーにあるのか疑問が残る。以上を考え併せると,コンビニエンスストア側に全く賠償義務がないとは思われないが,過失相殺として5割の賠償責任義務を認めることはやや厳しいと判断される。
⑵ 否定例(名古屋地判平成25年11月29日38))

① 事件の概要

 本件は,顧客Xが本件コンビニエンスストアの店内で,折からの降雪により店内の床が濡れていたため転倒し受傷したとして,同店の経営者が店内の床を乾いた状態に保持すべき注意義務を怠ったために発生したと主張して,Xは同店のフランチャイジー Y1とフランチャイザー Y2に対して,共同不法行為に基づき(Y1は固有の不法行為,Y2は使用者責任)連携して損害賠償を求めた事案である。なお,床清掃はフランチャイズ本部の加盟店向けマニュアルに従い,モップで都度水気を拭取りがなされている。

②判旨

請求棄却
 本件店舗は,南北に長方形で,店舗の北側から西側にかけて複数台の駐車用スペースが設けられ,その間に歩行スペース(犬走り)が設けられ,北側に店舗出入口が設けられていたこと,本件店舗の内側は,出入
口付近にレジカウンターが設けられ,内側の床面はPタイルという素材で敷きつめられており,他方,店外の犬走りはタイル様のもので舗装されていたこと,また,本件店舗内部の出入口前に中マットが一枚,店外
にも出入口前に束子状の外マットが置かれていたこと,そして,本件事故当時Xが履いていた草履の左右いずれかの底に水を含んだ半透明の雪がべったりと付着していたこと,以上の事実によるとXの本件事故の原
因は,Xが出入口のマットで草履の底面に付着した雪を十分に拭かなかったことにあり,経営者であるYらとしては来店者がそれぞれ,靴底の状態に応じて外マット及び内マットでそれに付着した雪を拭うものと信
頼してマットを設置したものであるから,それ以上に特別のマットを設置する等の措置を講じるまでの注意義務はなく,YらはXの本件転倒事故につき不法行為上の責任はないと判示した。

③ 本判決の考察

 本件は,コンビニエンスストアの店舗内で顧客が転倒した事故につき,コンビニエンスストアの経営者に過失がないとして,顧客のコンビニエンスストア経営者に対する損害賠償請求が棄却された事例である。前述の「転倒の3要因」から見た場合,「環境要因」としては,来店客が当時履いていた草履の底面には,当時水分が多く含んだ半透明状の雪が一面に付着していたものと認められること,「身体要因」としては,「靴底で踏み固められた湿度を含む雪が容易に取れないものであること」が認められる。最後に「身体活動」であるが,「積雪が見られた日に草履ないしサンダルを履いて外出」とある。これらが重畳して転倒に至っている。なお,本人の素因は認められない。
以上の転倒の原因を踏まえて本判決を次に検討してみる。前述の判例と違い,本件は天候(積雪)により床が濡れていたのであり,店舗側は店外駐車場の雪かきを数回行うと共に,フランチャイズ本部の加盟店向
けマニュアルに従いモップで都度水気を拭取りがなされている他,出入口前の店外側に束子状の外マット,店内側に中マットを1枚設置している。また来店客の転倒に至る受傷機転であるが,積雪が見られた日に草
履ないしサンダルを履いて外出するなどというのは突拍子もない行動とまでは言えないものの甚だ軽率といわざるを得ないし,コンビニエンスストアとして外マット及び内マットをそれぞれの靴底の状態に応じて十
分に拭うものと信頼して設置をしていることから,自招事故性が強く認められ,店舗側はこれ以上の注意義務を負うものではないというべきであり,衡平にかなった判旨と考える。
次に,以上の判例から転倒事故の特性を整理の上,コンビニエンスス
トアにおける転倒事故のリスク・コントロールを考察する。

5.コンビニエンスストアにおける転倒事故に対するロス・コントロール

5.1 判例から見る転倒事故の特性

 判決を見てみると店舗施設の瑕疵あるいは施設の管理に対する安全義務の認否が分かれる。この判断の差異は,店舗の管理上の責任

①本来滑りにくい構造であるべきところが濡れているなどにより滑りやすくなった状態がすみやかに是正されたか,あるいは放置されていたのか?

②来店客がつまずきやすい構造となっていたか否か)と来店客の自招事故性(例えば,積雪時に草履を履く等甚だ軽率な行為が認められたか否か等の過失の程度)などの要因と思われる。コンビニエンスストアにおける転倒事故は,「転倒の3要因」が揃ったときに転倒の危険性が上昇する。そこで,コンビニエンスストア側が3要因に対してどれだけ過失として寄与しているかを考察する必要がある。
 まず「環境要因」であるが,本来滑りにくい構造であるべきところが濡れているなどにより滑りやすくなった状態がすみやかに是正されたか,あるいは,放置されていたのかが問われる。事故当時の店舗側の都合と水濡れの床材が相当し,コンビニエンスストア側が

①水濡れに対し対策を施したか。

②滑りにくい床材を使用しているかが問われる。

①では,清掃時における拭き方に「客が転倒しないように水拭きをした後に必ず乾拭きまでしなければならない義務」までは発生しないものの,水濡れが店舗側の都合により湿潤させた場合に対しては乾拭き等床が滑らないような状態にすることが求められると考える。

 具体的には,店舗側の水拭きがずさんなため湿潤したままの場合が想定される。さらに天候(降雨,積雪時)の場合であれば,最低限,店舗出入口にマットを設置する等の一定の安全配慮義務が求められよう。また

②では,床材の性能の「滑りやすさ」は,メーカーの特別の要請があることを怠ることが店舗側の責任を問う条件と考える。
 次に「身体要因」であるが,来店客の素因や来店時が履いている靴が相当する。コンビニエンスストアは不特定多数の者が出入りする場であり,来店客の素因は問えないと判断するが,履いている靴については自招事故性の観点から一考を要する。即ち,来店客は降雨や降雪等の気象条件に応じて歩行に適した滑りにくい靴を履くことが期待されるのであり,靴底が減って滑りやすい靴を履くことはやむを得ないにしても,積雪の日に草履を履くことは突拍子もない行動とまでは言えないものの甚だ軽率といわざるを得ない。
 最後に,「身体活動」としては歩行状態が挙げられるが,来店客の視界が狭まる要因(利用者がつまずきやすい構造となっていたか否か)が店舗側にある場合,一定の責任が認められる。また,来店客に自招事故性が認められる場合は,公平の原則から過失相殺がなされているケースが多い点に特徴が見られる。
なお,過去の判例において過失相殺が認められなかった事案であっても,将来は通常有すべき安全性に欠けると判断される可能性があることに留意が必要である。

5.2 具体的なロス・コントロール
 高齢者や障害を持った来店客の場合,体勢を崩した際の瞬間的な回避能力に不安があり,店舗側はこのような来店客を前提とした安全対策が必要である。

転倒事故に対するロス・コントロールには,店舗の建設段階と管理段階(別表),フランチャンザーの対応の3つのステップが挙げられる。
⑴ 店舗の建設段階
 ビニル系床には床材の JIS 規格は存在するが,滑りやすさについてのJIS 規格は存在しない。床の滑り試験方法について指示があるのみである。
 2012年8月に,「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律バリアフリー法)のガイドラインが改訂され,「床のすべりについて,評価指標は JIS A 1454に定める床材の滑り性試験によって測定される滑り抵抗係数(C.S.R)を用いる。」と記された。判例42)においても施設管理者の責任の認否において滑り抵抗係数の数値が問われるようになってきており,店舗側も床材の選択には留意し,滑りにくくすることが必要である。
⑵ 店舗の管理段階
 各フランチャイズ本部から加盟店に対し配布される店舗の運営方法のマニュアルとノウハウの指導に基づき,店舗は管理を行っている。その中で店舗の「クリンネス」については,来店客に快適な買物環境を提供すると共に賠償リスク軽減および排除の観点からも重要である。その基本は清掃,清潔,衛生管理であり特に清掃の徹底は転倒リスクの対策において特に重要である。店舗の清掃については,チェックリストにクリンネスの対象箇所と「きれいさ」の基準がリストアップされている。
 国土交通省「高齢者,障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」
上記以外 適宜
 他にも,来店客がカウンター上に設置しているコーヒーマシンからコーヒーを抽出した際床面にこぼれたままの場合44)の他,天井のエアコン,冷凍食品ケース・アイスケース・冷蔵オープンケース等からの水滴がしたたり落ちたままの場合には滑りやすくなるので清掃時に注意を払う必要がある。
 また降雨,降雪時には「滑りやすくなっています」,「足元にご注意ください」等の黄色の立て看板(フロアサイン)による注意書の掲示,マットを出入口に配置および濡れた箇所(雨水)をモップで拭く等の清掃方法等が決められている。しかし店舗スタッフがレジ対応に追われ,モップで拭くタイミングを逸することが懸念される。その際は濡れた靴や傘を持ち込まれないよう,また滑りやすくなっているので注意をするよう店舗スタッフが来店客に対し声掛けをする,また滑りやすい床面には目立つように色をつけたり,反射テープを貼ることが来店客の事故自招性の軽減や排除の上で効果的と考える。

参考に、滑り抵抗係数(C.S.R)の数値が安全な値であっても、滑るところは滑ります。

人が歩いてみて安全な所は安全!感性の問題だと思います。

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