屋内プールのプールサイド。床のすぐ横にオーバーフロー溝があり、床面の清掃中の様子

プールサイドの滑り止め施工は、施工した日がゴールではありません。施工後の床をどう洗い、どう管理するかで、滑りにくさが長く続くかどうかが大きく変わります。

特に、小さなお子さまが裸足で走り回るキッズプールやスイミングスクールでは、「施工したのに、しばらくしたらまた滑るようになった」という事態は避けなければなりません。本記事では、プールサイドの滑り止め効果を保つための日常メンテナンスの考え方と、S-LEAD JAPANが施工前に必ずお伝えしていることをご紹介します。

なぜ「水で流すだけ」の清掃では足りないのか

プールサイドの清掃は、ホースで水を流してデッキブラシで軽くこする、という方法が一般的です。見た目の汚れは落ちるため、これで十分だと思われがちですが、滑りの原因となる汚れは水だけではほとんど落ちません。

プールサイドの床には、次のような汚れが少しずつたまっていきます。

  • 皮脂・汗・日焼け止めなどの油分
  • 水中の成分や消毒剤と反応してできる薄い膜状の汚れ
  • 湿った環境で発生しやすいぬめり(バイオフィルム)

滑り止め施工は、床材の表面に目に見えないほど細かな凹凸をつくり、濡れても足裏がグリップするようにする工事です。ところが、この細かな凹凸に油分やぬめりが入り込むと、凹凸が埋まって施工前に近い滑りやすさに戻ってしまいます。施工後に「効果が落ちた」と感じるケースの多くは、施工の効果が消えたのではなく、汚れで凹凸がふさがれていることが原因です。

効果が落ちる原因については、滑り止めの効果がすぐ落ちる原因でも詳しく解説しています。

プールサイドのメンテナンスに必要な3つのポイント

① アルカリ性洗剤で、油分とぬめりを分解して落とす

皮脂や日焼け止めなどの油分は、酸性の汚れです。これを落とすには、アルカリ性の洗剤で汚れを分解し、浮かせて取り除く必要があります。水やお湯だけでこすっても、油分は床に薄く広がるだけで、凹凸の奥には残ってしまいます。

業務用のアルカリ性洗剤は濃縮タイプが多く、そのまま使うのではなく水で薄めて使うのが基本です。濃ければよく落ちるというものではなく、濃すぎると洗剤成分が床に残りやすくなり、すすぎにも手間がかかります。希釈倍率は、汚れの程度と洗剤の表示に合わせて決めます。どの洗剤をどの濃さで使うかは、施工後に床の状態を見ながらご案内しています。

② すすぎ水の流し方に注意する(循環ろ過系に入れない)

プールサイドならではの注意点が、すすぎ水の行き先です。多くのプールでは、床の雑排水を流す排水溝と、プールの水をろ過装置へ戻すオーバーフロー溝(循環ろ過系の溝)が、すぐ近くに並んでいます。

洗剤を含んだ水がオーバーフロー溝に流れ込むと、プール水に洗剤が混ざったり、水質管理に影響したりするおそれがあります。洗浄の際は、次の点に気をつけます。

  • 洗浄する前に、どの溝が雑排水用で、どの溝が循環用かを確認しておく
  • 洗剤水は雑排水側へ寄せるように流し、オーバーフロー溝に入れない
  • 洗浄はエリアを区切って行い、洗剤を広げすぎない
  • 最後は真水で十分にすすぎ、洗剤成分を床に残さない

施設ごとに排水の構造は異なるため、施工時に現地の排水経路を確認し、その施設に合った流し方をご説明しています。

③ 道具を使い分ける(ポリッシャーとデッキブラシ)

広い面積を効率よく洗うには、ポリッシャー(床洗浄機)が適しています。一定の力で回転しながら洗うため、デッキブラシよりも凹凸の奥の汚れを掻き出しやすく、作業する方の負担も軽くなります。

一方で、壁ぎわ、排水溝のまわり、スタート台やはしごの付近など、ポリッシャーが届きにくい場所はデッキブラシで仕上げます。ブラシやパッドは、硬すぎて床を傷めないもの、柔らかすぎて汚れが落ちないものを避け、床材に合ったものを選ぶことが大切です。

メンテナンスの頻度の目安

必要な頻度は、利用者の数や屋内・屋外の別、水質管理の方法によって変わります。あくまで一つの考え方として、次のように分けて考えると無理なく続けられます。

  • 毎日:営業後に水で流し、デッキブラシでぬめりやすい場所(排水溝まわり・壁ぎわ)を中心にこする
  • 定期的に:アルカリ性洗剤とポリッシャーで、プールサイド全体の油分とぬめりをしっかり落とす
  • 気になったとき:「足裏の感覚がいつもと違う」「ぬるっとする場所がある」と感じたら、その場所を重点的に洗浄する

毎日の水洗いを続けていても、定期的な洗剤洗浄をしなければ、汚れは少しずつ蓄積していきます。「毎日きれいにしているのに滑る」と感じたら、まずは洗剤洗浄を試してみてください。

S-LEAD JAPANが「施工後の維持管理」を大切にする理由

S-LEAD JAPANでは、施工のご相談をいただいた段階で、施工後のメンテナンスについても必ずご説明しています。滑り止め施工の効果を長く保てるかどうかは、施工の品質と同じくらい、施工後の維持管理にかかっているからです。

私たちは、どのような現場条件にも誠実に対応し、施工費用はできるだけ抑えることを心がけています。その分を、施工後の洗浄やメンテナンスに充てていただきたいと考えているためです。

そのため、「メンテナンスは難しそうだから、施工だけしてほしい」「日常の清掃は今まで通り水洗いだけで続けたい」というご要望に対しては、正直にそのままでは効果を保つのが難しいことをお伝えしています。施設の運営方法によっては、施工をお見送りいただくようご提案することもあります。施工した床で事故が起きないことこそが目的であり、効果が続かない施工をお引き受けすることは、施設様にとっても利用者さまにとっても良い結果にならないからです。

もちろん、「洗剤の使い方が分からない」「スタッフに説明できるか不安」という場合は、実際に洗浄の手順をお見せしながらご説明します。施設の体制に合わせて、無理なく続けられる方法を一緒に考えますので、お気軽にご相談ください。

まとめ:施工とメンテナンスはセットで考える

  • プールサイドの滑りの原因となる油分やぬめりは、水洗いだけではほとんど落ちない
  • アルカリ性洗剤を適切に薄めて使い、凹凸にたまった汚れを分解して落とす
  • すすぎ水はオーバーフロー溝(循環ろ過系)に入れず、雑排水側へ流す
  • ポリッシャーとデッキブラシを使い分け、届きにくい場所まで洗う
  • 滑り止めの効果を長く保てるかは、施工後の維持管理で決まる

プールサイドの滑り止め施工そのものについては、プールサイドの滑り止め施工|濡れても滑りにくい床にするME工法で解説しています。

よくある質問

Q. 家庭用の洗剤で洗ってもよいですか?

汚れの量が多いプールサイドでは、家庭用の中性洗剤では油分を十分に落とせないことがあります。また、床材や施工面によっては使わない方がよい洗剤もあります。使用する洗剤は、施工時にご確認ください。

Q. 効果が落ちてきた気がします。再施工が必要ですか?

多くの場合、まずはアルカリ性洗剤での洗浄で改善するかを確認します。汚れを落としても滑りやすさが戻らない場合は、床の状態を確認したうえで、再施工が必要かどうかをご案内します。

Q. スタッフが少なく、ポリッシャーを使った清掃が難しいのですが…

施設の体制によっては、定期的な洗浄を専門業者に任せる方法もあります。どの程度の頻度・方法なら続けられるかを、施工前に一緒に検討しましょう。