スポーツクラブでの転倒事故判例
事故概要
スポ-ツクラブの正会員が、当該クラブのプ-ルで行われた水中体操に参加後、水着のままロッカ-ル-ムに通ずる廊下を歩行中転倒して負傷した。
本件事故当時、前記コンクリート壁の端付近の箇所は、何らかの原因のために、利用者の身体から落ちた水滴が集まって小さな水たまりができやすかったこと、この箇所に水がたまっていると、滑りやすかった。
この事故の事故パターン
事故のきっかけ | 事故の過程 | 結果 | 詳細と留意点 | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 濡れ | すべる | 転倒(床の上で転ぶこと) |
事故概要詳細
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判例の詳細
- 責任の所在
- 建物所有者(スポーツクラブ経営者)
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵あり
ア プール、シャワー利用後よく身体を拭かず、水着が水分を相当含んだ濡れた状態のままで利用者が通行することが少なくなかったため、本件廊下は、ナラの小市松材質でフローリングされた床面上に水滴が飛散し、しばしば滑りやすい状態になったこと
イ 利用者は素足で本件廊下を通行するので、転倒して受傷する危険性があったこと
ウ 係員は、本件廊下やロッカールーム等をおおむね一時間おきに巡回して床の水をふき取ったり、プールでのレッスンが終了した後も、時間を見計らって本件廊下の水をふき取る等して清掃を行っていたが、その清掃が行われる前には、本件廊下、殊に、前記コンクリート壁の端付近の箇所は、小さな水たまりができる等して滑りやすい状態になっていたこと、
エ にもかかわらず、カラーすのこを敷く等して右危険を防止する有効な措置が執られていなかったこと
から、本件施設には、設置又は保存の瑕疵がある。
- 過失相殺
- 被害者以外に同様の事故が生じやことはないことなどから被害者の過失を認め、過失相殺(4割)している。
判例の解説
- 事案の概要
- スポ-ツクラブの正会員が、当該クラブのプ-ルで行われた水中体操に参加後、水着のままロッカ-ル-ムに通ずる廊下を歩行中転倒して負傷した事故が発生した。被害者が建物所有者であるスポーツクラブに対し、工作物責任に基づき損害賠償を請求した事案である。
なお、本件事故当時、前記コンクリート壁の端付近の箇所は、何らかの原因のために、利用者の身体から落ちた水滴が集まって小さな水たまりができやすかったこと、この箇所に水がたまっていると、滑りやすかったことが認められている。
- 裁判所の判断
- 裁判所は、
① 工作物ノ設置又ハ保存ニ瑕疵アル」とは、当該工作物が当初から、又は維持管理の間に、通常あるいは本来有すべき安全性に関する性状又は設備を欠くことをいい、その存否の判断にあたっては、当該工作物の設置された場所的環境、用途、利用状況等の諸般の事情を考慮し、当該工作物の通常の利用方法に即して生ずる危険に対して安全性を備えているか否かという観点から、当該工作物自体の危険性だけでなく、その危険を防止する機能を具備しているか否かも併せて判断すべきであるとした上で、
② 本件につき、
ア プール、シャワー利用後よく身体を拭かず、水着が水分を相当含んだ濡れた状
- 態のままで利用者が通行することが少なくなかったため、本件廊下は、ナラの
- 小市松材質でフローリングされた床面上に水滴が飛散し、しばしば滑りやすい
- 状態になったこと
イ 利用者は素足で本件廊下を通行するので、転倒して受傷する危険性があったこ
- と
ウ 係員は、本件廊下やロッカールーム等をおおむね一時間おきに巡回して床の水
- をふき取ったり、プールでのレッスンが終了した後も、時間を見計らって本件
- 廊下の水をふき取る等して清掃を行っていたが、その清掃が行われる前には、
- 本件廊下、殊に、前記コンクリート壁の端付近の箇所は、小さな水たまりがで
- きる等して滑りやすい状態になっていたこと、
エ にもかかわらず、カラーすのこを敷く等して右危険を防止する有効な措置が執
- られていなかったこと
から、本件施設には、設置又は保存の瑕疵があったものと判断した。
③ また、会員の会則では「本クラブの利用に際して、会員本人または第三者に生
- じた人的・物的事故については、会社側に重過失のある場合を除き、会社は一
- 切損害賠償の責を
負わないものとする。」旨定めているが、本件施設の設置又は保存の瑕疵によ
- り事故が発生した場合の被告の損害賠償責任は、スポーツ施設を利用する者の
- 自己責任に帰する領域のものではなく、本件規定の対象外であるとした(免責
- 規定による免責は認めなかった)。
④ ただし、被害者以外に同様の事故が生じやことはないことなどから被害者の過
- 失を認め、過失相殺(4割)している。
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