転倒事故を予防する方法は? 事故の原因と事例について
店舗での事故は、日々さまざまなところで起きてしまっています。消費者庁に寄せられている事故情報のうち、7割以上が転倒事故なのです。今回は、店舗で起きてしまう転倒事故の原因と対策、事故事例についてご紹介します。
店舗での転倒事故の原因は?
転倒事故の原因として最も多いのが、店内での床滑りです。床滑りの事故が起きてしまうケースとしては、以下のものがあげられます。
雨の日に入り口のマットで滑る
雨の日に入り口のマットから床に足を踏み入れた際に床で滑ってしまったり、マットそのものがずれて滑ってしまったりという場合があります。
入り口のマットは、靴についた水を吸い取る以外にも、傘を閉じた際に軽く払った水などもすべて吸水してしまいます。多くの方が来店すればするほど、それだけ雨水がマットに染み込みますので、こまめに取り替えるなどして対応すると良いでしょう。
こぼれてしまっている水や氷を踏んで滑る
鮮魚コーナーやウォーターサービスなどの周辺にこぼれてしまった水で足を滑らせてしまう場合があります。
多くのお客様は、床ではなく商品の陳列された棚を見ながら歩いているため、色のついていない水が床に広がっていたとしても気づきにくいのは頷けるでしょう。こちらもマットの対応と同様に、こまめに店舗内の床を清掃するようにします。特に、水が床に広がりやすい場所には目を光らせておきましょう。
落下物で足を滑らせる
野菜コーナーの野菜くずやこぼれた飲み物、商品の値札、店舗で配布されるビニール袋などの落下物を踏んで足を滑らせてしまう場合があります。
店舗内でスリップしてしまう原因は、水だけではありません。多くの方が来店するスーパーでは、お年寄りから小さな子どもまで年齢層もさまざまです。子どもの不注意で野菜を落としてしまったり、お年寄りが落としたビニール袋に気がつかなかったり、ということもあるかもしれません。スタッフが常に清掃に動くことができれば安心ですが、なかなかそこまで手が回らない場合や、混雑している時間帯などは時間を決めて店舗内を見回りしてみてはいかがでしょうか。
このように、床がぬれていて滑ってしまう、何かを踏んでしまって滑ってしまうという転倒事故の他に、段差でつまずいてしまう、来店しているその他のお客様や従業員と衝突して転倒してしまうということも考えられます。
店舗は、来店しているお客様が転倒してしまう危険性を多くはらんでいるのです。
安全のための予防対策
店舗での転倒事故を予防するために、まず徹底したいのが床の清掃です。
雨の日に床の清掃をするのはもちろん、店舗に勤務している時間は、歩くところすべてで、床がぬれてしまっていないか、商品が落ちていないか、踏んでしまいそうなものはないかに気を配るようにしましょう。従業員全員が気をつけることで、転倒事故を予防できる可能性が高まります。
特に気を配りたいのが以下の場所です。
・入り口
・トイレ
・製氷機付近
・鮮魚コーナー
・野菜コーナー
・青果コーナー
これらの場所を通るときには、特に気を配るようにしましょう。もし、床が汚れているなどの問題があって、時間がないなどの場合には、その場所を管轄している方などにその旨を伝えて、掃除してもらうようにしてください。
その他、大きめの段差がある場所には緩やかなスロープを取り付けたり、段差注意などの注意喚起を促す看板などを取り付けたりすると良いでしょう。人と人との衝突を防ぐために、店内では走らず前を見て歩くようにというアナウンスなどを行い、注意を促すとよいでしょう。
店舗には、さまざまな転倒事故が起きる危険性があります。転倒事故を予防するために、従業員全員で気を配るように教育を行うことが大切です。
店舗での転倒事故の事例
店舗での転倒事故は、実際にどのような事故が起こっているのでしょうか。ここでは、転倒事故の事例を2つご紹介します。
床に落ちていたアイスクリームで足を滑らせた事例
1つ目は、ショッピングセンター内の通路で起きた転倒事故の事例です。
71歳の女性が大きなショッピングカートを押しながら歩いていたところ、アイスクリーム店の前の通路で足を滑らせて転倒。女性は3カ月に及ぶ入院生活を送り、その後も通院治療を受けましたが、関節に後遺症が残りました。
この転倒事故は裁判によって、店舗前の床に落ちていたアイスクリームが主な原因であり、店舗内の安全管理を怠ったショッピングセンター側に責任があったとして、転倒した女性の損害賠償請求が認められました。
床が濡れていたことで転倒した事例
2つ目にご紹介する事例は、スーパーの店舗内で起きた転倒事故の事例です。
37歳の女性がスーパーで買い物中に豆腐売場付近で転倒、右膝の骨折によって3カ月の通院治療を受けました。
女性は、自分が足を滑らせたのは床が濡れていたためであり、適切な清掃管理をしていなかったスーパーに責任があるとして、スーパー側に損害賠償請求をしました。しかし、スーパー側に損害賠償責任はないと裁判で認められ、請求は棄却されました。
事故当日、そのスーパー付近では雨が降っておらず、かつ女性の自宅からスーパーまでの道のりでは雨が降っていたため、足元が濡れていたのは女性の傘や衣服から落ちた水滴である可能性が高いことや、店側の清掃体制に問題がなかったと認められたことなどが棄却理由です。
2つの事例から分かるように、転倒事故の原因はケースによって異なります。また、事故の責任が店舗側と被害者側のどちらにあると認められるかも、状況によって異なります。