スーパーマーケット店舗内床で、滑り転倒事故 裁判 判例
事故概要
スーパーマーケット(以下「本件店舗」という)を訪れた客が、店舗内の床の管理が不十分で、床が濡れていたために店舗内で転倒し傷害を負った
この事故の事故パターン
事故のきっかけ | 事故の過程 | 結果 | 詳細と留意点 | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 濡れ | すべる | 転倒(床の上で転ぶこと) |
事故概要詳細
|
|
判例の詳細
- 責任の所在
- 店舗建物を管理している会社の工作物責任を否定 清掃を怠ったとする従業員の責任を前提とする店長(使用者)の責任を否定
- 瑕疵・過失の有無
- 瑕疵、過失いずれも無
判例の解説
- 裁判所の判断
- 裁判所は、概ね以下のように述べて、工作物責任・使用者責任のいずれについても理由がないとして、原告の請求を棄却した。
① 本件店舗の床はそれ自体として特段危険性を有するものではなく、床に水濡れが生じたとしても直ちに危険となるものではないが、床の一部分についてのみ大きな水濡れが生じ、周辺と大きな滑り抵抗値の差が生じた場合には、一応転倒の原因ともなりうる状況にあったものというべきである。
② 床の清掃状況、当日は冬であり、また降雨の有無はともかく雨天気味で湿気は相当にあったと考えられ、床に水分があった際に乾燥するまで時間がかかると考えられる状況にあったこと等の事情が認められ、これらによれば、本件当日に転倒現場付近で開店前の水モップ拭きが行われた可能性は必ずしも否定されないが、大量の水が転倒現場付近にばらまかれるような事象が起きた形跡は特段ない。
③ 開店時間前後において本件店舗付近、あるいは原告宅から本件店舗までの道のりにおいて強い雨が降っていたと考えることはできず、原告の衣服等から多量の水が床に落ちたと考えられるわけでもないのであって、転倒当時の床の状況としては、床が多少水分を帯びていた状況自体はあったとしても、それを越えて、床の上に水が浮いているような状況であったとは考えられない。
④ このような床の状況を前提とすると、元々本件店舗の床材は転倒事故を起こしやすいようなものではなく、また転倒現場付近の床は若干水分を含んでいたという程度の状況にとどまるものであったと考えられ、滑り抵抗が常に転倒の危険を生じるほどに低下していたり、あるいは床の他の部分と極端な滑り抵抗の差が生じるような状況にあったとは認められない。
⑤ 本件店舗において他に転倒事故が発生していた形跡が全くないことにも照らすと、転倒現場付近の床が一般的に転倒を誘発するような危険な状況にあったとはいえない。
⑥ 以上からすれば、本件店舗の床の管理について瑕疵があったとは認められず、また被告従業員において床の管理に関する注意義務違反があったとも認められない。
- 本判決のポイント
- 建物等の瑕疵に基づく工作物責任や安全配慮義務違反に基づく責任の有無につき、建物や設備が法令に従いかつ性能的に十分な安全性を確保しているかを問うている点や、ほかに同様の事故が生じていたか否かを上記責任の有無のひとつの判断材料としていることが参考となる。
|
|