公衆浴場、旅館等の入浴施設におけるレジオネラ症防止対策
レジオネラ症とは 更新日:2022年3月10日
レジオネラ症とは、「レジオネラ属菌」が原因で起こる感染症です。
レジオネラ属菌により汚染された目に見えないほど細かい水滴(エアロゾル)や土ぼこりなどを吸い込むことで感染します。人(感染者)から人への感染事例はありません。
潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は、2~10日です。主な病型として、「ポンティアック熱」と「レジオネラ肺炎」が知られています。「ポンティアック熱」は発熱や頭痛、筋肉痛などの症状で、一般的に軽症ですが、問題になるのは「レジオネラ肺炎」です。高熱や呼吸困難、胸痛、意識障害などが出て、適切な治療がなされなかった場合には急激に症状が進行することがあり、死亡することもあります。
レジオネラ肺炎は、乳幼児や高齢者、病人など抵抗力が低下している人や健康な人でも疲労などで体力が落ちている人などが発症しやすい傾向があります。
近年、レジオネラ属菌による感染症患者は増加傾向にあり、注意が必要です。
レジオネラ属菌とは
レジオネラ属菌は、土壌や河川、湖沼など自然界に広く生息している細菌です。循環式浴槽、ジャグジー、加湿器、冷却塔などの人工的な水循環設備で、衛生的な維持管理が行われていないと、アメーバなどの原生生物に寄生し、増殖します。
20℃から50℃で増殖し、36℃前後が最も増殖に適した温度と言われており、入浴施設の浴槽水やシャワー水の温度に近いです。
主な感染源
レジオネラ属菌に汚染された循環式浴槽水、シャワー、ジャグジー、冷却塔水、加湿器などの人口環境水の目に見えないほど細かい水滴(エアロゾル)が主な原因となります。
入浴施設を管理する営業者の皆様へ
平成29年3月に発生した広島県内の温泉入浴施設におけるレジオネラ症の集団感染事例では、入浴客の中から58名の患者が発生し、1名が死亡するという大きな事件になりました。
この事件のほかにも、多くの入浴施設を原因とする感染事例が発生しており、特定の入浴施設だけの問題ではなく、全ての入浴施設において起こり得る共通の問題となっています。
入浴施設におけるレジオネラ症防止に対しては、日頃から適切な維持管理が必要となりますので、本県のガイドライン及び厚生労働省のマニュアル等をご覧いただき、「安全・安心」な入浴サービスの提供をお願いします。
主な入浴施設を原因とするレジオネラ症患者の発生事例
発生年月 | 発生施設 | 患者数 | 死亡者数 |
平成12年6月 | 茨城県内の入浴施設 | 27名※ | 1名※ |
平成14年7月 | 宮崎県内の温泉入浴施設 | 295名 | 7名 |
平成14年8月 | 鹿児島県内の温泉入浴施設 | 9名 | 1名 |
平成23年11月 | 群馬県内の温泉旅館入浴施設 | 1名 | 1名 |
平成25年2月 | 千葉県内の入浴施設 | 1名 | 1名 |
平成26年6月 | 埼玉県内の温泉入浴施設 | 3名 | 1名 |
平成27年6月 | 岩手県内の入浴施設 | 12名 | 1名 |
平成29年3月 | 広島県内の温泉入浴施設 | 58名 | 1名 |
※確定例。
本県のレジオネラ属菌による感染者の発生件数
平成25年 | 平成26年 | 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 |
34件 | 34件 | 63件 | 46件 | 49件 | 66件 | 63件 | 67件 |
入浴施設においてレジオネラ属菌の発生を防ぐには
浴槽水は、温かく栄養分があるので、衛生管理が不十分な浴槽や循環ろ過装置の内部及び配管などに、生物膜(バイオフィルム)というぬるぬるした膜ができます。
バイオフィルムは、アメーバなど微生物の温床となり、レジオネラ属菌の増殖の場となります。
レジオネラ属菌は、バイオフィルムの内部に生息し、消毒剤などの殺菌作用から保護されています。循環式浴槽では、浴槽水の消毒が行われていてもレジオネラ属菌への消毒には不十分であり、バイオフィルムを除去することが重要となります。
また、浴槽水が停留しやすい循環配管、連通管、水位検知管及びろ過器などは、バイオフィルムが定着し易い環境となります。
入浴施設の衛生管理ポイント
1.浴槽水の完全換水
- 原則、毎日する。ただし、循環ろ過器を設置している場合、週1回以上行う。
- 気泡発生装置を設置している場合、原則、連日使用している浴槽水を使用しないようにする。
- 打たせ湯やシャワーは、循環している湯水を使用しないようにする。
2.浴槽の清掃、消毒
- 循環ろ過器を設置していない場合、毎日清掃、月1回以上消毒を行う。
- 循環ろ過器を設置している場合、週1回以上完全換水し、清掃、消毒を行う。
3.循環ろ過器(配管を含む)の消毒
- 1週間に1回以上消毒を行う。
4.浴槽水の塩素消毒
- 浴槽水には、塩素を注入し、遊離残留塩素濃度は、1リットルあたり通常0.4ミリグラム程度、最大でも1.0ミリグラム以下に保つ。
- 遊離残留塩素濃度は、定期的に測定する。
5.集毛器(ヘアーキャッチャー)、調整箱等の清掃、管理
- 集毛器は、毎日清掃する。
- 調整箱は、定期的に清掃する。
- 回収槽は、湯水が滞留する場所なので、定期的に内壁の洗浄、消毒を行う。
- 貯湯槽は、通常60℃以上、最大使用時55℃以上に保つ。定期的にバイオフィルムの状況を監視し、必要に応じて清掃、消毒を行う。
- その他、ジェット装置、気泡発生装置、消毒装置、シャワーヘッドなど浴槽に付帯する設備は、適切に維持管理する。
6.水質検査の実施
- 水質検査(大腸菌群、レジオネラ属菌など)を原則、年1回以上実施する。
- 連日使用している浴槽水は、年2回以上実施する。気泡発生装置などがある場合は、年4回以上実施する。
7.衛生管理に関する記録の作成、保管
- 自主的な衛生管理を行うため、衛生管理責任者を定める。
- 管理マニュアルや点検表を作成し、従業員に周知する。衛生管理(洗浄、消毒、換水、清掃など)を記録し、保存する。※点検記録票の例(36KB)
- 遊離残留塩素濃度の測定結果を記録し、3年間保管する。
- 水質検査結果を3年間保管する。
入浴者への注意点
入浴者が遵守すべき以下の事項について、見やすい場所に掲示してください。
- 浴槽に入る前には、身体の汚れを洗ってから入ること
- 浴槽内で身体を洗い、また、タオル、手ぬぐい等を使わないこと
- 浴室内で、用便をしないこと
- 大声で騒ぐなど、他の入浴者に迷惑となる行為をしないこと
県民の方へのお願い
レジオネラ症防止のため、マナーを守って入浴しましょう。
施設の使用再開に伴うレジオネラ症への感染防止対策について
再開時のレジオネラ症対策に注意しましょう
新型コロナウイルスの影響で休業している入浴施設(公衆浴場、旅館の共同浴場)において、施設休止後の再開時は、レジオネラ属菌が増殖している危険性が高いので、十分に清掃・消毒した後に営業再開するよう注意してください。
施設の使用再開に伴うレジオネラ症への感染防止対策について(令和2年5月13日厚労省事務連絡)(PDF:58KB)
その他の施設等について
冷却塔
空調冷却塔は、6月から9月頃まで使用され、その水温は15℃から30℃を超え、レジオネラ属菌にとって最適温になります。冷却水には藻類や原生動物、多くの細菌が生息しており、レジオネラ属菌によって生息しやすい条件がそろいます。
対策としては、専門業者による日常の維持管理が重要です。月1回の冷却塔の洗浄とレジオネラ属菌の定期的な検査を行います。
洗浄には過酸化水素、殺菌剤または塩酸、有機酸等の薬剤を使用し、洗浄後に抗レジオネラ用空調水処理剤を投入します。
加湿器
高齢者施設において、加湿器内の汚染水のエアロゾル(目に見えないほど細かい水滴)を吸入したこと等が原因とされるレジオネラ症の感染事例が報告されています。
加熱をしないタイプの超音波式、遠心式加湿器では、タンクの汚染が起こりやすく、長期間水を溜めたまま放置される可能性があります。
加湿器の汚染防止対策としては,
- タンクの水は、毎日交換する。
- タンクの水は、水道水等の衛生的な水を使用し、水のつぎ足しはやめる。
- 汚れやぬめり(バイオフィルム)が生じないよう、タンク内部を定期的に洗浄する。
- 長時間使用しないときは水を抜き、汚れを取り除いて乾燥させる。
ご家庭のお風呂
お湯を循環ろ過して長期間使用する、いわゆる24時間風呂の場合は、レジオネラ属菌が増殖する可能性がありますので、適宜お湯を取り換え、清掃を行うなど清潔に保ちましょう。
また、シャワーもエアロゾルを発生させますので、シャワーヘッドやホースを定期的に清掃、消毒するようにしましょう。
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