需要増加に伴う宿泊施設への影響
宿泊施設需要の増加とともに膨らむ清掃負担
現在、日本ではホテルなどの宿泊施設が不足し、客室の稼働率が上昇しています。
限られた時間内に部屋を清掃し、次のお客様が快適に過ごせる空間を提供するのは、ホテルの重要な課題と言えるでしょう。
そんな課題の1つとして客室の消臭があります。
最近の宿泊施設では、チェックアウト後の部屋に、宿泊客が飲食した臭いや、香水の臭い、人それぞれの独特の臭いなど、次のチェックイン時間までに除去したい臭いがどうしても残ります。
特に、窓の開閉が限られる客室では、空気の入れ替えや、空気清浄機を使ったとしても、短時間で臭いを除去しきれないことがあります。あとに臭いが残るような薬品類を使うわけにもいきません。
汚れや臭いが付着しやすい内装材
臭いの除去が難しい原因の1つに挙げられるのは、内装材への臭いの付着です。
日本のホテルや旅館では、床はカーペットや畳、壁はクロスが多く使われています。これらの内装材は、いったん汚れや臭いが付着すると落としにくいものです。
一方、海外のホテルでは、汚れや臭いの付きにくい天然石やタイルを客室の床や壁に張るケースが多く見られます。
旅館の畳をはじめ、日本の宿泊施設の 内装は、汚れや臭いが付着しやすいうえ、 取り除きにくい建材が多く使われている。
海外のホテルの床や壁は、セラミック タイルや天然石など、汚れや臭いが付き にくく、清掃の手間が少なくて済む素材 が多い。
天然石と同等以上のセラミックタイル
石の本場、欧州のホテルでも普及
石の本場とも言える欧州では、エントランスやロビーなどの共用部はもちろんのこと、客室でも石材を用いたホテルが多く見られます。
そんな欧州のホテルで、最近、天然石の代わりにセラミックタイルを用いるホテルも増えてきました。背景にあるのは、このコラムのPart1でも触れた通り、「大型化」、「薄型化」、「デザインの洗練」といった近年のめざましい進化です。
大判になるほど掃除の負担減に
清掃の負担という視点で見ると、大判のセラミックタイルは有利です。汚れが付きやすく、目立ちやすい目地が少なくて済むからです。
セラミックタイル自体も、汚れを除去しやすい特徴を備えており、日常的な清掃ならば水拭きは不要です。
最近は、天然石と見分けがつかないほどリアルな柄のセラミックタイルをつくれるようになっています。天然石と同様の高級感を醸し出し、しかも天然石では確保しにくい大判を使うこともできます。
十分に優位性が知られていない
日本でも、一部のホテルで共用部からセラミックタイルの採用が始まっています。
しかし、臭いや汚れの悩みを抱えるホテル経営者などに、その優位性は十分に認知されていません。
多くのホテルでは、イニシャルコストを抑える方向で、床や壁などの内装材を選ぶ傾向が見られます。しかし、観光客の増加とともに膨らむ清掃の負担を軽減するためには、これまでの建材選びを見直すことも有効でしょう。
この数年で大きく進化したセラミックタイルは、「大型」、「薄型(軽量)」、「デザイン性」に加え、「メンテナンス性」や「耐久性」も兼ね備えた建材です。
そうした特性にいち早く着目した鉄道駅やショッピングモール、オフィスビル、コンビニエンスストアなどでは、すでに普及が始まっています。同じように、ホテルの客室や共用部でも採用が進めば、経営者も利用者も高い満足感を得られるでしょう。